1.オレイルアルコールの油/水界面吸着膜の相転移と臨界状態 オレイルアルコールのヘキサン溶液/水界面張力を温度の関数として測定し、熱力学関係式により解析した。20℃付近までの低温領域では、アルコールの界面密度は溶液濃度とともに単調に増加するが、25℃以上では15mM付近の溶液濃度で界面密度-濃度曲線に変曲点を生じ、吸着膜相転移が示唆された。したがって20℃〜25℃付近に臨界点が存在すると考えられる。この相転移は、相転移前後の分子占有面積から判断してアルコールの炭化水素鎖中央部の二重結合が水との接触から開放されることにより起こるものであり、通常の疎水基間相互作用による相転移と異なった駆動力で誘起されている。このことは温度の上昇により相転移が誘起される-つまり下部臨界溶解現象と類似している-ことからも支持される。 2.非イオン性界面活性剤-エタノール混合系の気体膜-膨張膜相転移と臨界状態 気体膜-膨張膜相転移を示す非イオン性界面活性剤(ドデシルジメチルホスフィンオキシド、DePO)と相転移を示さないエタノール混合系の表面張力を、全濃度とDePOとエタノールの混合組成の関数として測定した。エタノールのモル分率0.3近傍まで相転移が存在し、この組成よりエタノール側では相転移は観測されなかった。したがってこの組成近傍に臨界点が存在する。気体膜ではエタノールの吸着が促進され、膨張膜ではエタノールはむしろ界面付近から排斥されることが明らかになった。
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