研究概要 |
高強度フェムト秒レーザーを用いると、親イオンが高効率で生成する場合があることがわかってきた。しかし、フラグメント化するものもあることがわかってきた。そこで、本研究ではまず、高強度フェムト秒レーザーを用いたイオン化に着目し、親イオン生成のキーファクターを明らかにすることを試みた。また有機塩素化合物(ペンタクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール等)についても調べた。これまで高強度フェムト秒レーザーを用いた有機塩素化合物のイオン化の例はなく、もしこれに成功すれば、極めて有効なダイオキシン類高感度検出法に発展できる。 親イオン生成のキーファクターを明らかにするため、よく似た分子ペアである1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエンと2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンのイオン化を行った。レーザーの励起波長である800nmに親イオンの吸収をもたない1,3-シクロヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエンでは、親イオンが大きく観測された。一方、800nmに親イオンの吸収をもつ1,4-シクロヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンでは、フラグメントイオンが大きく観測された。また近年多数報告された炭化水素についても、レーザー波長における親イオンの吸収で同様に親イオン生成/フラグメント化を説明することができた。これらにより、レーザー波長における親イオンの吸収が親イオン生成のキーファクターであることが明らかにした。 次に有機塩素化合物のイオン化を試みた。高強度フェムト秒レーザーを用いることで、ベンタクロロペンゼン、ペンタクロロフェノールのような多塩素置換体でも、親イオンが比較的高効率で生成することを見い出した。今回初めて高強度フェムト秒レーザーによる有機塩素化合物(多塩素置換体)のイオン化に成功し、有効なダイオキシン類高感度検出法に発展できる見通しを得た。論文に発表し、特許を申請した。
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