研究概要 |
高強度フェムト秒レーザーを用いると、親イオンが高効率で生成する場合があることがわかってきた。しかし、フラグメント化する場合も多いことが知られている。昨年度は高強度フェムト秒レーザーを用いたイオン化に着目し、親イオン生成のキーファクターを明らかにした。今年度は多種の有機塩素化合物(ペンタクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール等22種)のイオン化を測定しからさらにメタン、ハロゲン化メタン(15種)発展させた。さらに新しい実験として、波長可変赤外レーザー(1400nm中心)励起についても調べた。有効なダイオキシン類高感度検出法に発展できる見通しを得た。 1.励起波長が800nmの場合:レーザー波長がカチオンの吸収と共鳴すると分解が起こりやすい。このことは塩化、フッ化ベンゼン、ハロゲン化メタンでも確認できた。ジベンゾ-p-ダイオキシンはバラバラに分解したが予想通りであった。 2.励起波長が1400nmの場合:2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンでは800nm励起ではフラグメントイオンが観測された。800nmに親イオンの吸収を持つためである。しかし、1400nm励起の場合フラグメントイオンとともに親イオンが観測された。この分子カチオンは1400nm吸収を持たないからである。同一の分子で励起波長を変えることにより、親イオンを生成できることを示すことに成功した。 3.ダイオキシン親イオン:励起波長が1400nmの場合、フラグメントイオンとともに親イオンを観測することに成功した。この波長に親イオンの吸収がないものと推定される。 高強度フェムト秒レーザーを用い、カチオンの吸収と重ならない波長で励起ることにより、親イオンを生成できることを見い出した。ダイオキシン親イオンを非共鳴多光子イオン化法では今回初めて観測することに成功した。更に研究を展開すれば、有効なダイオキシン類高感度検出法に発展できる見通しを得た。実際、この研究は実用の機器を製作する計画が持ち上がっている。関連した論文を発表し、または発表準備中である。
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