霊長類に関して:フサオマキザル13頭リスザル7頭ケナガクモザル1頭の糞DNAにおいて赤緑視物質遺伝子の第3及び第5エクソンをPCR法で増幅することができた。その際、糞DNAは糞塊サンプルより糞表面を綿棒でなぞって採取したサンプルの方が、PCR増幅されやすい傾向があることがわかった。また、塩基配列はPCR増幅DNA断片から直接決定することができた。遺伝子型は視物質タンパク質の180番目、277番目、285番目のアミノ酸が何であるかで決定されるが、それら3カ所のうち2カ所以上でヘテロ接合状態である場合には、それらの間の組み合わせを決定するためにPCR増幅DNA断片をプラスミドベクターを用いてクローン化し、その塩基配列を決定した。こうして調べたすべての個体について糞DNAからの色覚型の判定は血液DNAからの判定と矛盾しなかった。ただし、一部の糞サンプルについては血液DNAで検出できた対立遺伝子の一方の増幅が悪く、その対立遺伝子の存在を見落とす危険性があった。この危険を回避するには、糞DNAに含まれるPCR増幅可能なゲノムDNAの量を予めリアルタイムPCR法により定量し、その量に応じた回数でPCR再現実験を行うことが有効であることを示した。 ゼブラフィッシュに関して:桿体視物質遺伝子に関しては、遺伝子上流域-GFPレポーターによるトランスジェニックゼブラフィッシュを確立し、遺伝子上流1.1kbが桿体視細胞特異的な発現を誘導するのに十分であることを示した。錐体視物質遺伝子に関しては各遺伝子の上流DNA領域をGFP遺伝子に接続したレポーターコンストラクトをゼブラフィッシュ胚に導入し、少なくとも上流約3kbを用いれば各視物質のタイプ特異的な細胞でGFP発現を観察できることを示した。ただしRH2-1では上流約20kbにある領域が発現誘導に必要であることがわかった。
|