河床の石の表面に生存している微生物の現存量の測定を、従来法(河川水中から右を取り出し、サンプルを採取する)と水中法(水中で石を採取する)の両方で行い、両者の測定に違いがあるか検討した。河川中に数週間放置された素焼きのタイル、あるいは自然石を上記の2つの方法によりそれぞれ3連で採取し、細菌と原生動物(鞭毛虫と繊毛虫)の細胞密度について、愛媛県内のいくつかの河川において測定した。 細菌については、14回中3回について、水中法による値の方が有意に高い結果が得られた。この3回中の最初の1回は、脆く崩れ易いミズワタが河床全面を覆っており、従来法では基層を水中から取り出した際にその部が剥がれ落ちてしまったと考えられる。次の1回が得られた際には、石表面の微生物群集の生物量が高かった。従来は、細菌の藻類への付着は強いと考えられてきたが、このケースでは発達した付着藻類群集中の無流層中に浮遊細菌が存在していたと考えられる。また、残る1回では、増水の後で石の表面の微生物膜がまだ未発達であったが、この段階の微生物膜では細菌の付着力が弱かったと考えられる。鞭毛虫および繊毛虫については、14回中それぞれ3回および2回について、水中法による値の方が有意に高い結果が得られた。これら水中法の方が有意に高い結果が得られた際には、付着藻類の現存量が高く、発達した付着藻類群集の上あるいは中の無流層に浮遊性あるいは付着力の弱い原生動物が存在していたと考えられる。また、本研究では、従来法による測定値の方が水中法によるそれよりも高くなるケースは一例も見られなかった。以上の結果から、河川河床の石の表面の無流層に生息する微生物の現存量の評価には、水中法を用いるべきであると示唆された。この無流層には細菌や原生動物が生息しており、これら微生物の食物連鎖である微生物ループが存在・機能しているかもしれない。
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