ラン藻Synechocystis sp. PCC6803における脱水・乾燥ストレス応答を調べるため、昨年度に引き続いてNorthern hybridizationを用いて、ストレス応答遺伝子の解析を行った。その結果、昨年報告した遺伝子のほかに、slr1739やslr1128も脱水・乾燥ストレスで発現量が増大することが明らかになった。また、乾燥ストレスで発現量の増加する遺伝子のほとんどすべてが、塩ストレスあるいは浸透圧ストレスのいずれかまたは両方で発現誘導された.このことから、脱水・乾燥ストレスは、塩ストレスと浸透圧ストレスの複合として現われると考えられる.しかし、RpoD1 (slr0653)など浸透圧ストレスで発現誘導が見られるものの、脱水・乾燥ストレスで変化が見られないものもあった。次に、水分子輸送タンパク質遺伝子とされるslr2057の遺伝子破壊株(以下変異株Aと略す)、およびグルコシルグリセロール合成酵素遺伝子sll1566とスクロース合成酵素遺伝子sll0045の両遺伝子破壊株(以下変異株Bと略す)を作製した.これらの変異株をセルロース膜上で脱水・乾燥させたところ、変異株Aは野生株と比べて乾燥速度があまり変わらなかったが、コロニー形成率で求めた細胞の生存率は野生株より早く低下した。一方、変異株Bは、野生株や変異株Aに比べて乾燥速度が速く、生存率は変異株Aと同程度に急速に低下した。以上の結果から、適合溶質の合成、及び水輸送タンパク質の機能は、脱水・乾燥ストレス耐性に重要な役割を担っていることが判明した。
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