研究概要 |
研究に着手した昨年度は,異なった光条件下でヒドラを培養することによって,光が触手形成,精巣形成,間細胞の増殖に作用していることを明らかにした。2年日の今年度は,次の3点を中心に研究を行なった。1)光の作用する波長域の詳細な検討。2)恒暗と恒明条件で培養した際の神経伝達物質量のHPLCを使っての比較検討。3)神経伝達物質の投与による光形態形成の検討。 1)において,20,000lxのハロゲンランプを光源として,カットオフフィルターを用いて,特定の波長下でヒドラを21日間培養し,触手形成と精巣形成を調べた。その結果,触手と精巣形成に有効な波長域は両者で共通し,それは390-460nmと660nm以上の2領域にあることが明らかとなった。このことは,触手と精巣形成に関与する光受容体が同じものである可能性を示唆している。 2)において,ヒドラを恒明条件で培養すると,神経伝達物質のモノアミン(ドーパミン,セロトニン等)の量が恒暗条件で培養したものより多量に存在することが,HPLCの測定によって明らかとなった。このことはモノアミンが触手形成や精巣形成に関与している物質であることを示唆している。 3)の実験では,2)の結果を受けて,神経伝達物質のドーパミンを投与する実験を行なった。21日間毎日様々な濃度でドーパミンをヒドラに投与すると,新しい触手が形成された。一方,精巣はまったく形成されなかった。この結果は,光刺激によって増加したドーパミンは触手を形成するが,精巣形成には関与しない物質であることを示唆した。精巣形成には別の物質が関わっている可能性がある。
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