研究概要 |
通常の結晶形とトポロジー的に異なる構造を持つ、NbSe_3の"nπ-ひねりループ"結晶の作成に初めて成功した。これらの成長機構及びCDW(電荷密度波)転移について報告する。三セレン化ニオブNbSe_3は、一方向に導電性の良い伝導チェインを持つ、擬一次元性物質である。低次元導体に特有なCDW秩序状態を持つ代表的物質としてよく研究されている。この物質はホイスカー(ひげ結晶)を形成するのみであると従来信じられてきた。しかしNbSe_3の新規な結晶形が発見した。これらは円周に沿って一周するときのひねり数、nπで分類され、明らかに直線的なホイスカーとは異なるトポロジーを持つため、トポロジカル物質と呼ぶ。発見されたループ結晶のサイズは、外径10〜300μm、内径は最小で〜1000Å程度である。NbSe_3のコヒーレンス長(数μm)と同程度のループを得ることもできる。 ループ結晶に対し、直流2端子法により300-4.2Kの範囲で抵抗率測定を行った。その結果、通常のNbSe_3結晶と同様に、約Tc_1=141K,Tc_2=59Kにおいて2度のCDW転移が観測された。しかし、nπループには最大で4Kという大きな転移温度の降下が見られた。 Tcはd(Inρ)/d(1/T)のピークで定義される。この転移温度降下にはサンプル依存性が見られた。しかし、Tableのように、サイズの小さいものほど強くCDWが抑制される傾向がある。特筆すべき特徴として、大幅な降下(〜4K)は2πサンプルでのみ観察され、0πサンプルはホイスカとほぼ同じ性質であった。これはトポロジーによる定性的な差が生じているといえる。
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