研究課題/領域番号 |
13875002
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
グスマン ルイスA 岩手大学, 工学部, 助手 (80312510)
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研究分担者 |
横田 政晶 岩手大学, 工学部, 教授 (60250635)
久保田 徳昭 岩手大学, 工学部, 教授 (90003863)
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キーワード | 結晶成長 / 溶解 / 不純物効果 / リン酸2水素カリウム / アルミニウムイオン |
研究概要 |
不純物存在下において、過飽和条件下であっても結晶がしばしば溶解することがある。本来過飽和溶液中では結晶は成長しなくてはならない。これは熱力学的結論であるから、溶解するというこの現泉は、異常である。本研究では、この異常現象を実験的に検討した。 本年度は、実験の方向を変えて、過飽和条件下におけるアルミニウムイオン(III)の吸着を調べてみることにした。リン酸2水素カリウム結晶は(100)面と(1010)面を持っている。この2つの面における吸着特性は違う。したがって、面依存性を考慮できない通常の吸着実験では、いま着目している{100}面における吸着を調べることは出来ない。そこで、以下のような新しい手法を考案した。 小さな過飽和度(過冷却温度で表して0.7℃)の溶液に不純物を添加し結晶をつるして5時間保持しておく(この時間は予備実験をもとに定めた)。この間に不純物が吸着される。その後溶液を0.3℃/minの速度で冷却し、結晶の(100)面が成長を始める過冷却度ΔT_Gを検出する。このΔT_Gは、吸着量の指標となる。なぜなら、通常不純物吸着量が増加すれば結晶は成長しにくくなり、結晶成長開始過冷却度ΔT_Gは増加するからである。得られたデータを理論解析したところ、アルミニウム(III)不純物はラングミュア型吸着等温式に従って、{100}に吸着されていることが明らかになった。つまり、アルミニウム(III)不純物は結晶の表面に通常のしかたで吸着されているということになった。結局、吸着実験からは、溶解という異常現象に迫ることは出来なかった。 しかし、確かに過飽和溶液中で結晶は溶解する。これは実験事実である。ただ、再現性が乏しいだけである。ちなみに、ここで述べた吸着実験(過冷却度0.7℃)では、溶解は一度も見られなかったから、溶解のためには少なくとも、もっと大きな過冷却度が必要ということかも知れない。
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