研究概要 |
この研究の目的はナノ粒子にすると強磁性金属はもちろん金や白金など、通常磁性とは関係ない金属も自発磁化を生じる事に注目し、それを生かした磁気メモリ効果を持つ素子を創製することにある。そのために13年度はPd, Pt,Au,Pd/Ni金属微粒子に対する最適な粒径をしらべるため、磁性の粒径変化を詳しく調べた。特に「伝導性が大きいと思われ、原子状態での偏極が無いが粒径の増大にともなって偏極が出現し、電子の移動しやすさ(電気伝導性の良さ)の点からAu微粒子を重視するか、原子状態でスピン偏極しており粒径が大きくなるにつれて偏極が減少していくPt微粒子か、電荷の変化による磁性が敏感に変化すると考えられるPd微粒子、すでに巨大な磁気偏極をもちそのままバルクで強磁性に移行していくと思われるPd/Ni合金微粒子がよいのか?」について最適なものが何かを調べた。われわれの微粒子生成の方法は高分子の中に直径が2〜5ナノの微粒子を生成する方法である。この方法で分布がシャープで、なるべく磁性が強いもの、さらに電場、磁場に対する応答性が大きいものをねらって基礎特性を調べた。14年度は、自己組織化による微粒子の2次元配列膜の作成とその物性測定を重点的に行った。Au微粒子では基板上に溶液を滴下するだけで2次元六方格子状に微粒子が自己配列する現象があり、この膜を微細電極上に組み込むことで磁気メモリ素子形成を容易に行うことができる。また、大面積の微粒子超格子膜を得るためにLB法による膜形成を試み、成膜条件の最適化を行った。15年度はLB法で超格子状に並べた金微粒子を、半導体基板上にリソグラフィーで形成した微細電極に組み込み、伝導測定を行った。室温から低温までのI-V曲線を測定したところ、50K以下でクーロンブロッケイドによる明瞭なゼロバイアス異常を観測し、単電子デバイスとしての動作を確認した。電極を強磁性体に変え、クーロンブロッケイド領域でのトンネル磁気抵抗効果を調べ、磁気メモリとしての動作を調べた。
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