本研究は、3次元スペックル場が発生する空間的に不規則な分布をした光の放射圧を微粒子に作用し3次元ランダム媒質を制御して作製する、という新しいアイデアに基づいて光子のアンダーソン局在を解明することを試みている。光の揺らぎに起因するスペックルパターンを数十〜数百ナノメートルサイズの微粒子に照射し、光子の運動量変化によって発生する放射圧により微粒子を不規則に配置させ、放射圧で形成したランダム媒質の平均自由行程を自由に変化させたり、さらにはフォトニック結晶構造から不規則構造へと転移させることも可能と考えられる。本年度は、コヒーレンスの高いレーザー光と空間位相変調器を用いて顕微鏡下で任意の3次元光強度分布を生成するシステムの構築を行った。微粒子材料としては成形性や構造作製の自由度が高いガラスや高分子を用い、数十〜数百ナノメートルサイズの微粒子を作製する。具体的には、近赤外光の多光子吸収により可視・紫外領域の発光が観られる希土類イオンをドープしたガラス粉末と屈折率の高い酸化チタン微粒子を混ぜ合わせた試料を調製した。本試料は、(1)発光よりポンプ光の波長が十分長いため、発光はランダム媒質により高効率に閉じ込められる一方でポンプ光の散乱は十分低減することができる、(2)近赤外光ポンプによる可視・紫外アップコンバージョンランダムレーザー発振を実現できる可能性がある、という特徴を持つ。
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