本研究は、3次元スペックル場が発生する空間的に不規則な分布をした光の放射圧を微粒子に作用し3次元ランダム媒質を制御して作製する、という新しいアイデアに基づいて光子のアンダーソン局在を解明することを試みた。光の揺らぎに起因するスペックルパターンを数十〜数百ナノメートルサイズの微粒子に照射し、光子の運動量変化によって発生する放射圧により微粒子を不規則に配置させる。放射圧で形成したランダム媒質の平均自由行程を自由に変化させたり、さらにはフォトニック結晶構造から不規則構造へと転移させることも可能と考えられる。しかしながら、実験においては、微粒子による多重散乱が放射圧に与える影響が極めて大きく、自在にランダム構造を作製するところまでは未だ至っていない。すなわち、ランダム構造を形成した微粒子集団がさらに複雑な散乱場を形成してランダム構造を複雑化していくという自己組織化的な振る舞いが観られた。一方、ランダム媒質の光局在を制御する試みとして、非線形光学応答をもつ有機微結晶によりランダム媒質を作製し、光励起による屈折率変化により、局在モードが変化していく様子を理論的、実験的に解析した。コンピュータシミュレーションの結果および自然放出の増強効果の実験結果は、ランダム媒質の光閉じ込め効果を光制御可能であることを示すことができた。本研究の成果は、超低しきい値レーザー、超高速光制御デバイス、高感度感光材料、量子コンピュータの制御ゲート、量子暗号通信デバイスとして展開できるものと考えている。
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