本研究では、微小水滴が氷に相転移する瞬間の体積増を超音波AE信号として、また潜熱放出を温度上昇として観測し、結晶化過程の時間推移を把握することを目的とする。過冷却状態の静的物理化学的研究は海外でも盛んに行われているが、ミリ秒からナノ秒のタイムスケールで過冷却水の転移過程を動的にトレースする点が本研究の特徴である。 各種サイズ(0.3mmから2mm)の水滴を低粘度シリコンオイル中に分散させ、0℃をこえて低温状態にして徐々に温度を低下させたときの凍結によるAE信号と温度上昇を測定した。超音波AE信号は、水中マイクとAEマイクで検出し、受信信号をシーケンシャルシングルショット形のデジタルオシロに記録した。標準水中AEマイクは10Hzから200kHzの超音波を、AEマイクは200kHz〜2MHzの検出するのに使用した。信号の大きさは100マイクロボルトから10mVまで粒子径に対数的に比例した相関が見られたが、AE周波数については径にはよらず0.3〜1MHzの範囲のスペクトルが観測された。温度上昇の測定には25ミクロンの熱電対を使用し、1msの昇温速度が得られたが、この値はこの径の熱電対の測定限度であり、凍結時の昇温速度は更に高速である。 結論として凍結は1ms以上1マイクロ秒程度の間で進行していることが予想される結果が得られた。
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