研究概要 |
本年度は測定試料標的によりラザフォード後方散乱された陽子と,陽子ビームによる内殻電離の結果として放出される特性X線用の検出器,及びこれらの同時計測を行うための電子回路系の準備,及び調整試験を行った.Si(Li)半導体X線検出器,及びSi表面障壁型半導体荷電粒子検出器を真空容器に設置し,それぞれ単独にX線,後方散乱陽子の測定を行い,エネルギースペクトルの測定が可能となった.これにより予備実験として土壌・浮遊粒子状物質等の環境試料,及び燃料電池電極触媒中の微量元素測定等を行った.次にこれらX線,後方散乱陽子の時間信号をそれぞれ別系統のTiming Filter Amplifierにより増幅した後,Constant Fraction Discriminatorに通して論理信号としての波形整形を行った.これらの時間信号をTime to Amplitude ConverterにStart, Stop信号として入力し,時間差に比例する波高信号を発生させた.一方従来のX線及び散乱陽子エネルギースペクトル測定用の2系統のマルチチャンネルアナライザーに加え,新たに同時計測用の1系統を整備した.これに上記のTime to Amplitude Converterからの信号を入力して時間スペクトルを表示し,同時計数の時間領域にゲートをかけて論理信号を発生させた.これを用いてX線測定用マルチチャンネルアナライザーにゲートをかけ,陽子が後方に散乱されたときにのみX線スペクトルを測定するための回路系を構築した.並行してノイズ除去のために比例増幅器のPileup rejecterを調整してパルスのパイルアップ現象を排除するテストを行った.一方,同時計数のカウントを増加させるため,測定立体角が大きいアニュラ型のSi表面障壁型半導体荷電粒子検出器を用意し,これを測定用真空容器に取り付けるための機械設計を行った.
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