研究課題/領域番号 |
13875019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石川 順三 京都大学, 工学研究科, 教授 (80026278)
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研究分担者 |
後藤 康仁 京都大学, 工学研究科, 助教授 (00225666)
辻 博司 京都大学, 工学研究科, 助手 (20127103)
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キーワード | ナノイオン源 / ミクロン領域プラズマ / パッシェンの法則 / プラズマ生成 / ガス放電 |
研究概要 |
1.ミクロン領域における無磁場ガス放電現象に関する研究 直径10μmのガス導入孔を持つアノードと500μm径のイオン通過孔を有するカソードで、アルゴンガスの3keVにおける直流放電を行った。その結果、400nAの電流が得られたがカソードのイオンエロージョンにより約1時間ほどで電流は100nAに低下した。なお、pd積が800mm・Paで放電開始電圧は最低の425V程度であり、パッシェンの法則にしたがった。これに対してヘリウムガスの放電実験では、ガス導入孔径が250μmの場合、pd積(圧力と放電空間距離の積>が3,000mm・Pa以下と小さい場合は放電に要する電圧は600V以上と大きいが、pd積がそれ以上に大きい場合は180Vと低電圧で放電が持続し、安定なヘリウム放電プラズマが得られた。孔径が50μmの場合は、パッシェンの法則とは異なり、放電電圧はガス圧力に強く依存した。同じpd積でも370Paと高いガス圧力では放電電圧は200V程度であったが、43Paでは1000Vと高い放電電圧が必要であった。以上、ヘリウムでは放電開始電圧はガス圧力だけに依存した。 2.放電領域に磁場を印加した時のミクロン領域におけるガス放電現象に関する研究 20Paのヘリウムガスをガス導入孔径が10μmの穴を通して、放電空間に導入した場合、電極間距離1mmでは放電開始電圧は約1.3kVで、電極間距離にかかわらずほぼ一定であった。つまり、この場合もパッシェンの法則からずれていた。磁場の印加で放電電圧を低下でき、かつ、安定な放電が得られた。 3.ミクロン領域放電プラズマからのイオン引き出しに関する研究 10〜20Pa程度の低ガス圧力のヘリウム導入と1〜2kVの電圧で放電を生起した場合、アノードとカソードには370〜380μAの電流が流れ、イオン電流は10μA程度得られると考えられる。また、今回の実験系では差動排気が完備できていなかったので、コレクターに到達した電流は数10nAと少なかった。しかしながら、ミクロン領域で安定な放電が得られたことから、差動排気を整えれば、更に、細いカソード内壁を通してビーム径の微細なイオンビームが得られると期待される。以上から、ミクロン寸法のナノイオン源を開発できる可能性を得た。
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