近年、超音波の位相共役波の研究が盛んとなり、超音波画像の鮮明化、体内や海中における超音波収束への応用が期待されている。現在、位相共役波を用いたCモード画像の報告はあるが、鮮明なBモード(断面)画像は報告されていない。本研究は、位相共役と開口合成技術を結合させて超音波位相共役波発生過程におけるBモード(断面)画像を得るアルゴリズムを構築することを目標にして計画し、初年度に以下の成果を得た。 (1)超音波振動子アレイ(以下アレイ)を用いて位相共役波を発生させ、標的に超音波を収束させる過程における新たなアルゴリズムを提案した。現在、アレイを用いた位相共役波発生においては、ある1素子から放射される球面波の反射波を全素子で受信した信号を初期信号としているが、新アルゴリズムにおいては、まず全ての素子1個ごとの独立の送受信波形を求め、これを初期信号とする。これにより、対象各部からの信号の時間的位置が位相共役過程の回数によって変化することがなくなり、画像合成の基礎信号とすることができる。 (2)画像化対象として超音波反射率の異なる複数の点反射源を仮定し、通常の開口合成による画像と位相共役を含む開口合成による画像を計算によって求めた。その結果、位相共役の効果は対象の反射率の差をより拡大するコントラスト増強に現われ、画像の分解能には大きな差をもたらさないことがわかった。また、送信超音波の波束を非常に長くした場合にも、画質は大幅に低下するが最大反射率の標的の位置の確認はできることがわかった。
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