近年、超音波の位相共役波の研究が盛んとなり、超音波画像の鮮明化、体内や海中における超音波収束への応用が期待されている。本研究は、位相共役と開口合成技術を結合させて超音波位相共役波発生過程におけるBモード(断面)画像を得るアルゴリズムを構築することを目標としている。初年度には、アルゴリズムを提案し基本的な位相共役画像を計算により求めた。研究2年目である平成14年度には以下の成果が得られた。 1.超音波治療における腹壁のモデルとして、アレイ面の直後に層状媒質があると仮定し、位相共役開口合成画像を計算により求めた。層の音速が内部媒質と異なる場合、点散乱源の画像信号が低下し、その位置にも誤差が生じた。 2.2個の点散乱源が近接して存在する場合について、通常の開口合成画像と位相共役開口合成画像を計算により求めた。通常の開口合成画像は2個の点の位置を正しく表示するが、位相共役開口合成画像では真の像2個に加え、位相共役1回につき偽りの像2個が発生することが分かった。この偽りの像は、位相共役過程において、本来狙っていない点にも超音波を収束させる効果が生じるためである。この効果は散乱源の間隔が離れている場合にはほとんど無視できるが、近接している場合(波長の10倍程度)には問題となる。 以上をまとめると、本研究によって、位相共役開口合成によりBモード断層像の構築が可能であることが示されたが、上記のような新たな問題も見い出された。実用的な画像を得るにはアルゴリズムの改良が必要である。
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