第一原理分子動力学法を用いたシミュレーションにより、CNTに荷重を加えた際の変形挙動を観察し、その機械的特性を明らかにすることと変形に伴う電子構造の変化を調べることを目的としている。 本年度は、平面波基底を用いた量子力学シミュレーションとタイト・バインディング法に基づく非経験的シミュレーションを行った。はじめに、グラファイトシートについて解析し、シミュレーションの有効性を評価した。とくに、引張変形下の特性および6員環から5員環と7員環への組換えについて検討し、両法で良好な結果が得られることを確認した。また、負荷方向と微視構造の関係についても検討を行った。次に、単層アームチェア型単層とジグザグ型のカーボン・ナノチューブ(直径約1nm)の引張シミュレーションを行った。両者の引張強度は約120nNであり、ともに脆性的な破壊挙動を示す。剛性はジグザグ型がアームチェア型より大きく、特性はチューブの微視構造に依存することが明らかになった。さらに、Brennerポテンシャルを用いてアームチェア型とジグザグ型を連結した屈曲部を有するカーボンナノチューブの構造とその変形特性に関するシミュレーションを行った。屈曲部には5員環と7員環が存在し、チューブの曲げ変形に伴ってひずみ集中が発生することが判明した。局所のひずみ評価法について検討中であり、カーボンナノチューブの原子構造体としての強度解析に結びつける予定である。
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