本研究の目的は、原子レベルで平滑な表面を得ることのできる超精密研磨加工技術と、高分解能透過電子顕微鏡による原子レベルの表面構造解析技術によって、Siなどのバルク単結晶において従来とは異なる高指数の結晶方位を持った超平滑表面を創製し、またこれによって最終的には新しいエピタキシャル成長用基板を作成することである。本研究の実施計画は、(1)各種単結晶の特定指数面に沿った精密切断、(2)切断面の超精密研削および研磨加工と表面形状評価、(3)透過電子顕微鏡試料の作成、(4)透過電子顕微鏡による高分解能観察と結果の解析、という4段階に大別することができる。平成13年度においては加工条件及び電顕試料作成条件の最適化を目的としながら(1)〜(3)を実施した。(1)については新たに別予算で導入した精密結晶切断機に合わせて精密方位切断用の治具を製作し予備実験を行った。また、フッ化カルシウム単結晶の(111)面(劈開面)に対し約2〜4度傾いた面についてフロートポリシング法による超精密研磨を行った。その結果、rmsが0.4〜0.2nmと通常の光学研磨面に対して高い平滑度を持った研磨面を得ることに成功した。この研磨面について透過電子顕微鏡による断面観察を行った結果、加工変質層のない良好な面が得られていることがわかった。しかし、高分解能観察の結果からは加工表面には(111)面のステップ構造が存在し、これが表面粗さを規定していることも明らかになった。今後は(111)面と加工面との角度及び各種の加工条件を検討しながら、より平滑度の高い面の作成を目指す。
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