研究概要 |
本研究では,誘導放出光を利用することにより,迷光等の影響を受けない,油膜厚さの新しいレーザ計測手法を提案し,その有効性を明らかにすることを目的とした.本年度は最終年度として,主としてレーザ励起・誘導放出光計測システムの改良と,計測精度改善のための方策について検討を進めた. 昨年度と同様に,計測システムとしては,Nd : YAGレーザ(第2高調波:532nm)を光源とし,分光器及びマルチチャネル光検出器からなる分光計測システムを使用した.また実験装置としては,平行2平面間の隙間状流路に液体を流すことにより,任意厚さの液体膜・油膜を形成することが可能な装置を使用した.なお昨年度の成果を踏まえ,レーザ光入射ガラス窓の液体膜側にシアンダイクロイックフィルタをコーティングする改良を施した結果,測定部で誘導放出光を安定して発生させることが可能になった. 計測精度を改善するためには,ベースとなる蛍光や誤差要因の迷光から,誘導放出光をはっきりと弁別する必要が有る.この観点から相対誘導放出光強度(誘導放出光強度と蛍光強度の比)を定義し,これに及ぼす各種パラメータの影響を検討した.供試液体を水とし,また色素にローダミンBを採用して実験を行った結果,色素濃度は比較的濃い領域(液膜厚さ300μmでは600mg/L)に最適値が有ること,分光器のスリット幅は検出可能な明るさの範囲でなるべく狭い方が良いことが分かった.また光源のレーザ光強度は,比例して誘導放出光強度は高くなるものの,相対誘導放出光強度には影響を及ぼさないことを明らかにした.以上の結果を踏まえて,既知厚さの液膜の計測を行った結果,得られた誘導放出光のスペクトルは,マルチチャネル光検出器の分解能の範囲で理論値と一致し,本手法の有効性を確認した.
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