研究概要 |
ナノ構造をもつ表面として,矩形状の規則的な溝状テクスチャをもつ未記録のCDの記録面を,また,ナノ分子膜として,磁気ディスクの表面潤滑剤として使用されているPFPEを使用して,光の回折現象を利用して表面ナノ構造とナノ分子膜との相互作用を測定する装置を構成し,これを用いた実験を開始した.まず,回折光強度分布を測定するための光源として,レーザ光,蛍光灯,SLDを比較した.今期においては,回折色により簡易にspreading領域が観測できる蛍光灯を選定し,基本的な特性を評価することとした.ナノ分子膜としては,無極性のPFPE-z03を0.1wt%に希釈したものを用い,これをテクスチャ付き表面上に0.1μl滴下した.回折光強度をCCDカメラで撮影して,その強度分布を画像処理してspreading距離を測定して,拡散係数として評価した.使用した溝の形状は,DiskAでは,深さ30nm幅0.54μmピッチ1.6μm,DiskBでは,深さ50nm幅0.57μmピッチ1.2μmである.これまでに得られた結果を要約すると以下のとおりである. 1)溝状ナノテクスチャは,溝に平行する方向にはspreadingを加速させ,直交する方向に減速させる効果がある.この効果は溝が深いほど大きくなる. 2)Spreadingの速度は,初期には時間に比例し,後期には時間の平方根に比例する二つの領域が存在する.これは,初期における上層から下層に落下する行程と,後期におけるディスク表面でランダムウォークにより拡散する行程と解釈できるために,分子が層状に配列していることを示唆している. 3)モンテカルロ法を拡張して,溝の中における球形分子のspreadingのシミュレーションを可能にした.これに基づいて,数分子サイズの溝がspreadingを加速する特性を持つという実験と同じ結果を得て,シミュレーションの有効性を確認した.
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