数百μm程度のスケールの環境下における、低レイノルズ数流体の混合を促進する手法に関しては、従来の流体工学の知識をひもといてみても効果的な混合方法に対する指針を見いだすことは困難である。今年度はMEMS(Micro-Electro-Mechanical-System)や、生体工学分野における応用を念頭に試験薬と被試験薬の化学反応特性などの研究結果に関する文献の調査による情報収集を精力的に行った。その結果、本研究のめざすスケール域ではより小さいスケールでは有効なMEMS技術を利用することは困難であるとの結論にいたった。 1)実験的研究 マイクロスケールの実験装置開発を進めている。微細精密加工技術により外筒と内筒のそれぞれをわずかに削ることでせん断力を制御できる微細な溝を形成する技術にメドが立ち、まもなく実験装置が完成する予定である。 2)数値シミュレーション 2種の液体の混合効果を正しく評価する目的でSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法による数値シミュレーションを試みることとした。従来の計算法では混合効果は統計量として表われるのに対し、SPH法では個々の流体粒子にマークをつけてその移動が把握できることがSPH法を採用した理由である。本来、圧縮性流体用であるSPH法を、時間を停止しての密度ネゴシエーション過程を各物理時間ステップごとに挿入することで非圧縮流体の計算に適した形へと発展させ、計算時間の飛躍的向上を見ることができた。
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