今年度までにREMPIを用いた超希薄気体流計測システムを、現有のYAGレーザー励起の色素レーザーを中心とした光学系および2次電子増倍管とボックスカー積分器からなるイオン検出系により構成した。また、色素レーザーの2倍波出力にオートトラッキング装置を組み込むことで、広い波長範囲にわたって一定出力を維持することが可能となり、同時に広範囲のREMPIスペクトルの検出を可能とした。このシステムを真空中へ噴出する窒素の超音速自由分子流の流れ場に適用し、温度非平衡現象を調査した。その結果、並進と回転温度が異なるモード間非平衡現象や回転温度の凍結現象を明らかにするとともに、貯気室圧力が非常に低密度の場合には、回転エネルギー分布がボルツマン分布とならず、回転エネルギーの低い領域と高い領域でボルツマン分布から逸脱するモード内非平衡現象を明らかにした。現在、超音速自由分子流内で生起する非平衡現象をさらに詳細に解明すべく、計測点の移動装置の作成、差動排気の採用および検出システムの変更により広範囲な貯気室圧力の設定を可能にするなどのREMPI計測システムの改良を行った。これにより非平衡エネルギー分布の計測および平衡状態から非平衡状態への遷移を明らかにする実験が進行中である。 超高真空を維持できる差動排気真空チャンバーを利用した面-分子干渉実験装置が稼動状態となり、実験装置の真空特性を明らかにした。この装置を用いて、気体分子が固体表面と干渉した際のエネルギーおよび運動量交換に関する精緻データの取得に関連した実験が進行中である。
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