研究概要 |
大気のマイクロスケール異常流動の一つであるダウンバーストは、多くの航空機事故の原因として恐れられているが、長年の観測にもかかわらず、その突発性・局所性のゆえに、地表付近の速度場の詳細は不明のままである。これが明らかになれば、離着陸体勢にある航空機がこれに遭遇した場合のパイロットの回避行動や、自動操縦装置のアルゴリズム設計などに寄与するものと考えられる。本研究では、重力流(ダウンドラフト)とそれに随伴する渦輪が、地面に衝突する現象を実験室内で繰り返し再現させ、速度場の統計的性質を明らかにすることを目的とした実験を計画した。 実験は以下のように行った。まず、低密度流体(純水)を満たした容器の上部に、一定の張力をかけたLATEX膜で仕切られた高密度流体層(グリセリン水溶液)を置く。次に、LATEX膜を機械的に破ることによって高密度流体を落下させる。高密度流体中にはトレーサー粒子としてナイロン12を予め分散させておき、シート光を照射して粒子画像をCCDカメラに記録する。次に記録された2時刻の画像間で、粒子濃度パターンのマッチングを行い、流速ベクトルを算出する。レイノルズ数は実現象のそれ(渦粘性係数使用)と同オーダーとなるようにした。 まず、可視化写真を(Lundgren(JFM,1992),Alahyari(AIAA J.1995))と比較し、モデルの妥当性を検討した。現在、水平および鉛直断面内での瞬時速度場の計測を実施しており、せん断層の発達と渦輪の生成および、その挙動について検討中である。今後は、等密度場でパルスを与えることにより発生させたパルス駆動渦輪が地面に衝突する際の速度場と、今回のダウンドラフトの速度場を比較検討し、ダウンドラフトに随伴する渦輪の役割、特に周方向不安定(Widnal不安定)について明らかにする。
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