研究概要 |
流体が連続体であると仮定して展開されてきた既存のマクロスケール伝熱技術がそのままでは適用できなくなるマイクロスケール流れの例として,マイクロ衝突噴流によるピンポイント冷却を念頭に置いたマイクロ噴流を取り上げ,それに及ぼす圧縮性,希薄性の影響を実験的ならびに数値解析的に調べた.本年度はマイクロ噴流実現のために,ステンレス製キャピラリーチューブ,単結晶シリコンエッチング板,ステンレス製極薄膜を利用して長さの異なる噴流ノズル(水力直径:10〜100μm程度)を製作した.製作に際しては,とくに切削端面やその近傍の流路形状の変形,削りくずの付着などを顕微鏡で検査し,その中から最適な噴流ノズルを選別した.また,精密調圧器,微差圧計を流路に組み込んで実験装置を完成させた.なお,作動流体には不活性気体である窒素,アルゴン,ヘリウムを用いた.実験ではノズル前後の圧力比を変化させてノズル通過流量およぴ壁面摩擦係数を測定し,通常の大きさの噴流ノズルを用いた場合の結果と比較した. 一方,内部流の場合には他の研究者らも報告している壁面での滑り効果,あるいはノズル内流れの閉塞(チョーキング)現象を考慮し,上述の実験条件に対応させた定常二次元数値解析を行い,実験結果の妥当性を検討した.温度場については,まだ実験は行っていないものの,数値解析を実行し,粘性消散や可逆仕事の影響について考察を加えた.その際,温度の境界条件については小寸法化によるスケール効果から熱伝導の影響が大きくなり,断熱条件が必ずしも適当ではないことを明らかにした.計算結果として,圧縮性の影響は無視できず,ノズル入り口からノズル内流路沿いに下流に向かって流速の増加が著しいこと,ノズル断面内流速の分布形状が放物型から次第に平坦化すること,粘性消散の影響のために壁近傍で流体温度が比較的高くなること,などが分かった.
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