本研究の期間内に達成すべき目的は2つある。第1はナノ粒子(数十〜数百ナノメートルのサイズ)を導電性および非導電性液体中に懸濁し、「物性制御を目的としたナノ粒子人工流体」を創製することである。たとえば、高粘性流体は、通常、低熱伝導性を有するが、金属系ナノ粒子を添加してナノ粒子流体化することによって、その流体的特性である粘性を変えることなく高熱伝導性を付与することが可能となる。第2は創製されたナノ粒子人工流体の熱流動特性(電磁特性、熱伝導性、キャビテーション特性など)を明らかにすることである。特に、キャビテーション気泡は、通常、液体中の溶存気体が減圧沸騰を起こして生成されるが、その大きさや数は液体中の核生成過程で決まると考えられている。この生成核の大きさは熱力学計算から数ナノメートルの大きさであるから、人工流体中ではナノ粒子が沸騰核として働くことが期待でき、このナノ粒子誘起キャビテーション気泡発生過程を可視化計測で明らかにする。 13年度は、次の2点を重点的に進めた。 1)ナノ粒子を導電性および非導電性液体中に懸濁し、物性制御を目的としたナノ粒子人工流体の創製を試みた。金属系および非金属系のナノ粒子(数十〜数百ナノメートルのサイズ)およびカーボン・ナノ・チューブを入手した。しかし、測定が困難なため粒径分布は明確に出来なかったが、水中へのナノ粒子の懸濁特性を調べた。想定した状況より容易に分散できることが分かったが、溶媒液の密度調整が重要なことが分かった。ナノ粒子の濃度・分散特性のレーザーを用いた光学的手法(屈折率の変化)や分光学的手法(波長特性:既設のイメージインテンシファイアーを利用)で測定法について検討した。 2)ナノ粒子人工流体実験装置を製作した。実験装置は、透明塩化ビニル製の試験部、循環ポンプ、ヒーター、温度調節器、流量計および配管・弁類から構成されている。試験部は加熱部を有する円筒であり、円筒中心軸上の空間に5本の高精度抵抗温度計を設置した構造である。また、熱対流状況の可視化が可能な構造とした。
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