研究概要 |
本年度は,微小デジタル光デパイスの基礎となる金属光配線について研究を行った.界面に光局在波が形成される条件は,誘電率が負となることである.例えば,金属_誘電体界面の表面プラズモンとフォトンの結合波(SP波)を考えた場合,金属には誘電率の実部が負でその大きさが大きいことが要求される.また,SP波の伝播損失は金属の電気抵抗により定まる.自由電子ガスモデルによれば,AuとSiO2界面のSP波の損失定数は波長1.55μmで約20cm-1と此較的小さいことがわかった.次に分光エリプソメータにより得られた誘電率をもとに損失係数を定量評価した.その結果,金属性が低いCr/SiO2でのSP導準の損失は1000cm-1以上と大きいが,Au/SiO2では損失は小さく,特に通信波長帯では100cm-1以下となることがわかった.1nP基板上にSiO2(200nm)を堆積し,その上にCr(5nm)を介してAuストライプ(厚み250nm)を装荷して形成した長さ約0.5mmの導波路についてSP導波の検証を行った.装荷形の横モード閉じ込め機構を解明するため,種々の導波路幅でSP波の伝播特性を調べている.実験的にはSP波を伝播させる最少のストライプ幅が存在し,ストライプ幅の増大とともに横モードはシングルからマルチへと変化することが確認された.結合効率はストライプ幅の増大とともに増大するが,損失係数はほぼ一定であり,さらにそれは40cm-1と比較的小さい値であった.半導体は分光エリプソメータによる誘電率からの予測では,遍信波畏帯であっても非常に大きな損失を示す.しかし,実際にInP基板上に金属を装荷して求めた損失係数は,40〜60cm-1程度であった.この実験により金属/半導体もSP波をよく伝播する材料であることがわかり,検討し得る応用範囲が大きく広がった.
|