研究概要 |
近年の大型地下構造物の増加に伴い,従来のボアホールとは比較にならない利点をもつ,深い坑道をプラットフォームとする本格的な地下計測技術の開発が国際的な競争テーマになっている。本研究は,その開発競争の中で見出された基本的で先進的な開発課題である。 本研究の出発点となったACROSS計画では、これまでGPS時刻信号で回転を制御する精密人工震源を開発し、これが作るコヒーレントな地震波によって地下の散乱体を検出・同定する装置の開発研究を進めてきた。そし、平成15年に試験的に東京電力・葛野川地下発電所の大規模坑道網(土被り500m,水平規模6km)を検討したところ,予期しない高いSN比が得られ,地下探査にブレークスルーをもたらす可能性が明らかになった。しかし深い坑道内では,GPS時刻信号が得られないため,震源および地震記録の時刻精皮が低下し,結果として分解能が落ちる。そこで地下の大規模計測システムに高精度時刻信号を供給する方式を検討した。 可能な方式を比較検討した結果,最終的にはGPS信号を引き込むか,さもなければ自前の原子時計が不可欠であることが判明した。しかし地下計測が多数の震源および地震計のアレイを用いる以上,巨大な水素メーザー時計はおろかセシウム時計をそれぞれに配するのは不可能である。そこで,(1)個々の装置が内蔵する水晶時計,(2)独立した専用水晶時計(内蔵ものより精度が高く運用に柔軟性が高い),(3)小型ルビジウム原子時計,(4)GPS信号,のヒエラルキーによる多層的な信号の配給・校正モデルが現実的でかつ所要の機能を果たすことが判明した。今後これを実現することが必要である。 葛野川のテストサイトの直近には,山梨県東部地震域が存在する。ここでは本州下に沈み込むフィリピン海プレートが強い曲げを受ける場所でもあり,極めて複雑な地殻の変形が進行している場所である。そこで静的な地殻変動の精密解析を並行させることは,ACROSS研究をサポートするために不可欠であることが判明した。そこでボアホールひずみ計測の計画を進めるとともに,4次元有限要素法によって,地殻変動を解析する研究を進めた。
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