研究概要 |
[目的] 最近の電子情報機器は高速・大容量伝送のため利用電波周波数が高周波側に移行し,近い将来ではマルチメディアの普及のためミリ波帯の電波の利用が計画されている.その反面電磁波障害が社会問題となり,この周波数帯域で機能できる電磁波吸収体が望まれている.しかし現有のスピネル系フェライトでは,ミリ波帯域で磁化損失を示す透磁率の虚部μ_r"が低下し,良好な電磁波吸収体とはならない.μ_r"は自然共鳴周波数f_rにおいて上昇するため,高い異方性磁界H_Aを持ちミリ波帯にf_rがある永久磁石材料を用いれば,この周波数帯対応の電磁波吸収体となる可能性がある.永久磁石として知られ,RをNdとしたNd_2Fe_<14>B化合物のf_rは,H_Aとスピンジャイロ磁気係数より約300GHzと算出される.またNdの一部をSmで置換することにより,H_Aも低下,f_rも低周波数側にシフトし,ミリ波帯で機能する電磁波吸収体が設計できると考えられる.そこで本研究ではR_2Fe_<14>B化合物を利用してミリ波帯電磁波吸収体を開発することを目的とし,R_2Fe_<14>B化合物の異方性磁界,自然共鳴における複素透磁率,電磁波吸収特性の関係について検討した. [方法] (Nd_<1-x>Sm_x)_2Fe_<14>B組成合金を溶解し均一化処理した.粗粉砕,微粉砕後磁場プレスにより圧粉体を作製し,VSMにより磁気特性を測定して異方性磁界を算出した.微粉末はエポキシ樹脂と混合して樹脂複合体を作製し,ネットワークアナライザにて電磁波吸収特性を測定した. [結果] 1)Sm置換量x=0.345において異方性磁界が最小となり, H_A=1.36MAm^<-1>であった.2)Sm置換量x=0.345の試料において33〜50GHzの範囲で反射損失RL=-20dBを越える電磁波吸収が観察され,最も薄い整合厚さはdm=0.42mm, 整合周波数fm=43.3GHz, 帯域幅Δf=1.4GHzであった.
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