類似の構造をもつ2種類以上の物質が、周期的に積層してできる変調構造を有する物質の物性と構造上の特徴との相関に関する知見を蓄積することが本研究の目的である。このような変調構造を持つ物質が多数知られているが、まずReSi_2とβZn4Sb_3を取り上げた。これらは、優れた熱電特性を示し熱電変換材料として注目される物質である。 我々のグループの研究によれば、ReSi_2単相はReSi_<1.75>組成で得られ、基本構造はC11_b型であるが、欠損Siが空格子点となり空孔規則相(Re原子16、Si原子28を含む大きな単位胞の単斜晶の構造)が形成される。この構造故に、僅かな組成変調あるいは面欠陥の存在によって微視的構造変調が生ずる。Si空孔の規則配列に伴う異方性によってゼーベック係数に異方性が生ずるため、熱電特性には異方性があり、C11_b構造の[001]方向を長軸とする結晶の熱電特性がよいことが明らかになっている。現在、添加元素を選択し、変調構造を制御することによって更なる熱電特性の向上を目指している。 Zn4Sb_3系化合物の微視的構造の観察にはまだ成功していないが、多少固溶域があるZn_4Sb_3相の場合、格子上のZn/Sb混合サイトのSb/Zn占有率比が微視的に変調している可能性がある。たとえば、何らかの理由によりZn欠損があれば、占有率比が1に対応するZn_6Sb_5を含む…Zn_4Sb_3/Zn_6Sb_5/Zn_4Sb_3…のような組成/構造変調が生じてもおかしくない。引き続きこのような変調構造の直接観察を試みている。物性測定はバルク材と薄膜試料を用いて行っているが、薄膜試料とバルク試料の電気伝導率はほとんど同じであるが、薄膜試料の熱伝導率はバルク材のそれよりかなり小さいことが明らかになっている。現在、このような物性と構造の関係を引き続き研究中である。
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