研究概要 |
カルシウムイオン10mMとリン酸イオン6mMを含む基本水溶液とし,金属チタン表面に水酸アパタイト(HAp)を被覆する手法について研究した.金属基板を水溶液中において通電加熱する熱基板法では,溶液条件の制御により析出形態,結晶性に変化があることが分かった.水溶液界面のイオン濃度のコントロールによりHApの過飽和度をうまく制御することで皮膜の形態も変化する.このようなHAp析出のための過飽和度を金属電極近傍の局所的反応場によりコントロールすることは,常温・常圧のソフト溶液プロセスの一つとしてまたバイオミメティックプロセスとして興味深く,有機・無機複合化皮膜への応用やアノード酸化法への適用も期待できることがわかった. 以下は,具体的成果である.試料に滑板材(厚さ0.3mm)と,この上にTi6Al4Vの直径100μm程度のビーズを3層,1523Kで3.6ks間,Ar雰囲気下で焼結したポーラス試料の2種類を用いた.溶液のpHは7を基準とし,4〜8に調整した.溶液濃度は,基本溶液の0.1倍〜10倍まで変化させた.さらにCaCl_2,Ca(H_2PO_4)_2,H_3PO_4の添加量を変化させることにより,液中のカルシウム/リンのモル比Ca/Pを0.0167〜16.7まで変化させた.基本浴では,pH6〜7を境界として,低pH溶液ではCaHPO_4(モネタイト,ブロック状)が,高pH溶液ではHAp(針状)が主として析出していることがわかった.pH7の基本溶液中で,140℃で16min.通電加熱した後にはHApがコーティングされ,ビーズにより形成されていた空隙が埋まることなく,原形に近い形を保持しており,さらに,空隙内部にまでHApの析出が認められ,極めて良好なコーティング状態であることがわかった.
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