研究概要 |
白金やパラジウム,ロジウムなどの白金系貴金属は,他の物質に無い化学的安定性,耐熱性,高電気伝導性および優れた触媒特性を有するため,排ガス用触媒や燃料電池用触媒,石油化学,医薬,食品のファインケミカルなど幅広い用途に用いられている。しかしながら,その化学的安定性や耐熱性,さらに貴金属同士の化学的性質の類似により,これらの貴金属の精錬や分離・回収は困難である。 本研究では,化学的に安定な白金系貴金属も,ある温度域においてはCaOと安定な化合物を生成することに着目し,従来の方法とは全く原理の異なった新しい貴金属の分離・精製の可能性を検討している。このCaO-白金系貴金属化合物の生成・分解反応を利用した新しい分離・精製プロセスを構築する上で,CaO-白金系貴金属化合物の熱力学データが必要となるが,現在のところほとんど報告されていない本研究では,PtとCaOの化合物であるCa_4PtO_6およびCaPtO_3の生成反応の標準ギブズエネルギー変化を,CaF_2を固体電解質とする起電力法により決定し,それらの化合物の相安定領域を決定した。 起電力法により求められたCa_4PtO_6生成反応の標準ギブズエネルギー変化と熱力学データ集^<2)>のCaOの標準生成ギブズエネルギーからCa_4PTO_6の標準生成ギブズエネルギーを以下のように決定した。 Δ_fG^0(Ca_4PTO_6)/kJmol^<-1>=2790+0.6055T(±3) 同様に,CaPtO_3生成反応の標準ギブズエネルギー変化とCaOの標準生成ギブズエネルギーからCaPtO_3の標準生成ギブズエネルギーを以下のように決定した。 Δ_fG^0(CaPtO_3)/kJmol^<-1>=-939.7+0.36047T(±1.1)
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