研究概要 |
ナノスケールの金属微粒子を合成する研究は古くから行われており,現在も種々のナノ粒子を合成するための研究がなされている。本研究では、ナノスケールの金属微粒子を固体担体中に1次元的に配列して固定化することを目的とする。また、その1次元配列を保ったまま金属微粒子を連結させ、ナノスケールの金属ワイヤーを合成することも検討した。金属としては,粒子同士の連結が容易と考えられる金を取り上げ,固体担体にはシリカを用いた。 塩化金酸を含むマイクロエマルション(ME)にアンモニア水を添加し、金水酸化物微粒子を合成した。ME系としては,主にC-15/シクロヘキサン系を用いた。微粒子合成時の水と界面活性剤のモル比(W)は17とした。その金水酸化物微粒子が分散したMEに、水および担体源であるテトラエトキシシラン(TEOS)を加えてエマルション(EM)とした後、TEOSの加水分解・重縮合を行い,シリカ中に金水酸化微粒子を固定化した。また,乾燥後の試料を空気焼成(200℃,2h)あるいはメタノール還元(80℃)することによって金ナノワイヤーの合成を試みた。 C-15濃度を0.125Mで一定にして水と界面活性剤のモル比(W)を変化させたところ、Wが低い場合は,球状シリカの中心に金水酸化物微粒子が固定化されたが、Wが40以上のとき、金水酸化物微粒子がシリカ中に1次元的に配列した。Wはミセルの直径に比例するパラメーターであるため,Wが大きい,すなわち太い棒状ミセルが存在するときに微粒子が1次元配列することが示唆された。 次に、なぜ金水酸化物微粒子が1次元配列する理由について検討した。固定化時のEMの安定性が微粒子の配列に影響しているのではないかと考え,EMの安定性について検討した。その結果、金水酸化物微粒子が1次元配列しなかった組成のEMでは相分離が起こり、1次元配列した組成のEMは分相せずに1相状態を保つことがわかった。したがって、金水酸化物微粒子が1次元配列するには安定なEMが必要であることがわかった。 最後に、金ナノワイヤーの合成について検討を行った。金水酸化物微粒子が1次元配列した試料を空気焼成およびメタノール還元した。空気焼成した試料では,シリカが棒状から球状に変形し,大部分の金微粒子は凝集していた。しかし,メタノール還元した試料では,金の凝集体は認められず,幅は約5nm、長さは最長で約300nmの金ナノワイヤーが得られた。
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