研究概要 |
担持金属触媒の金属粒子径が触媒反応特性に影響を及ぼすことはよく知られているが,担持金属粒子同士の間隔が反応特性に及ぼす影響については全く研究されていない。これに対して,当研究室で開発したマイクロエマルションを利用する触媒調製法では,金属粒子径を変えることなく,金属担持量を変化させて触媒を調製することが可能である。そこで,本研究では,Rh/SiO_2触媒によるCO水素化反応をとりあげ,Rh粒子径を変えることなくRh担持量を変えて触媒を調製し,Rh担持量およびRh粒子間隔がCO水素化反応特性に及ぼす影響を調べた。 触媒調製法には,マイクロエマルション(ME)法とシリカ包接法の2種類の方法を用いたが,両方法は調製条件が異なるだけで調製手順に相違はない。まず,外部水相のない油中水滴型のME中で,RhCl_3・3H_2Oとヒドラジンを用いてRh-ヒドラジン錯体微粒子を合成した。ME法ではセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)/1-ヘキサノール系MEを用い,包接法ではポリオキシエチレン(n=15)セチルエーテル(C-15)/シクロヘキサン系MEを用いた。その錯体微粒子が分散したMEにアンモニア水および担体原料であるテトラエトキシシラン(TEOS)を添加し,加水分解を行った.このときに加えるTEOS量を変化させることで,Rh担持量を制御した。 これらの触媒のCO水素化反応特性を調べたところ,Rh担持量によって表面Rh1原子当たりの活性(TOF)はRh担持量が3.5wt%のときに極小値を示し,炭素数2以上の含酸素化合物(C_2+Oxy)の選択性が極大となった。しかし,この触媒のTEM観察を行ったところRh粒子がシリカ担体に均一に固定化されておらず,Rh粒子間隔を計測することが困難であった。そこで,シリカ包接Rh触媒のシリカ被覆層厚さ(Rh担持量)を変えて調製し,Rh粒子間距離が反応特性に及ぼす影響を調べた。その結果,TOFと生成物選択性ともにほとんど変化しなかった。包接法触媒はRh粒子径一定でRh粒子間隔のみを制御できているため,Rh粒子の間隔はCO水素化反応特性に影響を及ぼさないことが示された。しかし,ME法触媒では工学的に有用なC_2+Oxy選択性が大きく変化していた。この原因について検討するため,触媒中のRhの還元されやすさを昇温還元法(TPR)によって調べた。その結果,ME法触媒では,TPRの還元ピークがRh担持量とともに変化し,触媒中のRhの還元性がCO水素化反応における生成物選択性と相関性があることが見出された。
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