本研究では既存の廃水処理場の省エネルギー化・低コスト化を目指し、排水場処理場に流下するまでの間に水質の改善を行うための下水管及び搬送システムの設計指針を得ることを目的とした。既存の下水管を流下する廃水では微生物の生育に必要な基質(F)に対する微生物(M)の比(F/M)が過大であり、溶存有機物質(F)の微生物変換は極めて低いと考えられる。そこで、下水管内部の材質・構造を改変することにより、下水管内F/M比を減少させ、管内における溶存有機物質の微生物変換を促進することを試みた。実験は人工下水を定量ポンプにより長さ1mのプラスチックで作製した模擬下水管を何度も循環することにより、循環回数と水質の変化を調べ、長い流路を廃水が搬送される際の実験室内シミュレーションを行った。また下水館内微生物量を増加する目的で、模擬下水管内壁を木炭および多孔質セラミックで被覆した。活性汚泥を種菌として用い、約1ヶ月の運転により、模擬下水管内壁に活性汚泥に由来する微生物膜が形成された。模擬下水管における酸素供給能力は酸素移動容量係数(KLa)を測定することにより明らかとした。また溶存有機物(TOC)の減少量とアンモニア態窒素の硝化脱窒反応を解析したところ、下水管内壁に活性汚泥を固定することにより、TOCの減少とアンモニア態窒素の減少が示された。形成された微生物膜において表面は好気性微生物叢によるTOCの除去及び硝酸化細菌による硝化反応が進行し、一方微生物膜内部においては嫌気的領域が形成され、脱窒菌による亜硝酸の還元が行われたことが示された。
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