研究概要 |
ラット肝細胞オルガノイドの細胞状態とヒト由来肝細胞のオルガノイド培養法を検討した。 1.肝細胞組織体(オルガノイド)である球状細胞組織体(スフェロイド)や円柱状細胞組織体(シリンドロイド)の細胞状態を解明する研究の一環として,ラット肝細胞オルガノイドにおける細胞間接着を解明した。その結果,カルシウム依存性のカドヘリン分子によって肝細胞オルガノイド構造が構築されていることを見出した。現在,オルガノイド内における細胞の分化状態や細胞外マトリクスとの関係を検討している。 2.ヒト由来胎児肝細胞(Huh-7)とヒト肝芽種由来細胞(HepG2)を静置培養下の肝細胞オルガノイド培養法に利用した。平板ポリウレタン発泡体孔内に播種したHuh-7およびHepG2は,スフェロイドを形成しつつ,増殖した。その結果,単層培養法では消失していたアンモニア除去能がスフェロイドを形成することによって回復した。ただし,機能発現レベルはヒト初代肝細胞の約1/10のレベルであった。また,スフェロイド化したHepG2のアンモニア分泌能は,単層培養の約2倍の高機能発現がみられた。さらに,中空糸内に遠心力を利用してHepG2にシリンドロイドを形成させた場合も同様の結果が得られた。これらの結果は,増殖状態にある細胞にオルガノイドを形成させることによって細胞分化を誘導できることを示唆するものである。現在,細胞の分化誘導の検討,およびモジュール培養への応用を進めている。
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