1.層状化合物半導体PbI_2(ホスト)に直鎖状有機分子n-ノニルアミン(ゲスト)をインターカレーションすることでノニルアミン/PbI_2複合材料膜を得た。得られた複合材料膜の色は黄色であったが、クセノン光を照射すると橙色に変化した。その後、光照射を停止すると元の黄色に戻るという可逆性を示した。粉末X線回折測定よりPbI_2層間でノニルアミンがc軸に対して約30度傾斜して、それぞれ2層(黄色)、1層(橙色)でインターカレーションしていることがわかった。このことから光照射、未照射により層間の大きさが変化することで複合材料の吸収端が変化し、その結果、複合材料膜の色が変化していると考えられる。 2.フーリエ変換赤外線吸収分析測定(FT-IR)を行い、複合材料膜の光照射によるデインターカレーション前後での層間に挿入されているノニルアミンの状態を調べた。その結果、光照射前の試料ではノニルアミン末端のアミノ基(-NH_2)において、逆対称伸縮と対称伸縮の2つの振動モードによる吸収バンドが現れていた。ところが光照射後は逆対称伸縮振動モードによる吸収バンドが弱くなっていた。通常、ノニルアミン溶液中ではN…H間に水素結合が存在するため、逆対称伸縮振動モードが抑制される。しかし、光照射前のPbI_2層間へのインターカレーションの状態はノニルアミンがPbI_2層間中で配向しているためN…H間の水素結合が消失し、逆対称伸縮振動モードが出現すると考えられる。一方、光照射によりデインターカレーションしたノニルアミンがPbI_2結晶子間に凝集することでN…H間に水素結合が生じて逆対称伸縮振動モードが消失していくと考えられる。
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