本研究では、分子に与えた圧力変化(力学エネルギー)を発光シグナル(光エネルギー)に直接変換できる、従来には無いまったく新しいタイプの分子デバイスの開発を目的として研究を推進し、今年度は以下の成果を得た。 1.気水界面でのコンホメーション変化が可能な人工ホストの開発 人工ホストとして、蛍光性のゲスト分子を包接可能なアザシクロファン骨格に、4つの胆汁酸部位をアミド結合で導入した化合物を合成し、ステロイドシクロファンと名づけた。胆汁酸の一つであるコール酸はステロイド骨格上に3つの水酸基を有し、親水面と疎水面を併せもっている。気水界面におけるこのホストのコンホメーション変化を、現有のLB膜作成装置を用いて、面積-表面圧曲線の測定から評価したところ、表面圧の低い状態では、4つのステロイド基の親水面を水面に広げたコンホメーションで存在し、圧縮により表面圧が増加すると、ステロイド基を立ち上げたコンホメーションに変化することがわかった。ここで得られた分子設計指針に沿って、種々の胆汁酸誘導体を用いた人工ホストを合成した。 2.気水界面での動的分子認識能の評価 場の極性や粘性に敏感な蛍光特性をもつ分子であるアニリノナフタレンスルホン酸誘導体をゲストに用いて、気水界面での動的分子認識を検討した。測定には、現有の瞬間マルチ測光システムとLB膜作成装置を組み合わせて用い、界面蛍光スペクトルの表面圧依存性から評価を行い、圧力変化を発光に変換するシグナル応答挙動の発現を明らかにした。 3.人工ホストの基板上への固定化と圧力-光応答特性の評価 上記の検討に基づき、基板上での圧力(応力)-光応答特性について評価を行うために、LB法を用いて基板上に人工ホストの累積を行った。
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