研究概要 |
本申請の目的は、核酸ポリマーを鋳型として配列させたジアセチレンモノマーを近接場光で局所的に光重合して、ポリジアセチレン単一分子ワイヤーを作製し、単一分子の導電性を測定することである。そこで、増感剤を固定化した核酸ポリマーを鋳型としてジアセチレンモノマーアレイをつくり、近接場光プローブ顕微鏡で局所的に光増感重合することで孤立したポリジアセチレン単一分子ワイヤーの作製を目指す。 そのために、ジアセチレン基を有する核酸塩基誘導体を合成し、気液界面で単分子膜を形成することを確認した。光照射によるジアセチレン基の重合反応を紫外-可視反射吸収スペクトルにより追跡できることを示した。ジアセチレン核酸塩基誘導体と下水相に溶解した核酸ポリマーとの相補的な塩基対形成を確認した。核酸ポリマーを鋳型としてジアセチレン核酸塩基誘導体が気液界面で配列していることを確認するために、ジアセチレンアデニンとジアセチレンチミンおよびオクタデシルシトシンの混合単分子膜を種々の核酸ポリマーを含む下水相表面に作製した。下水相にチミジル酸の30量体を添加したところ、A-Tペアを形成したジアセチレンアデニンとジアセチレンチミンがチミジル酸とHoogsteen型水素結合して会合し、光重合によりポリ(ジアセチレン)が生成したことがわかった。それに対して、グアニル酸とチミジル酸の交互共重合15量体を添加したところ、重合は劇的に抑制された。これは、A-Tペアを形成したジアセチレンアデニンとジアセチレンチミン間にグアニル酸と水素結合したオクタデシルシトシンが挿入し、ジアセチレン基の間隔を広げてしまったからと考えられる。すなわち、下水相に添加した核酸ポリマーが鋳型となり、ジアセチレン核酸塩基を配列していると考えられる。(Mol.Cryst.Liq.Crys.,371,33-36(2001),光化学,32,1-6(2001))
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