本研究は、平成13年度から15年度までの3ヶ年の予定である。本年度は、種々のジブロックコポリマーの合成と、物理ゲルのように自己組織化する刺激応答性高分子系の分子設計を検討した。まず、性質の異なるセグメントからなり、分子量や分布の制御されたジブロックコポリマーをリビングカチオン重合により合成した。モノマーとしては、性質の異なるセグメントが導入可能なビニルエーテル(VE)を用いた。これらのモノマーは置換基により相対反応性が大きく変化するため、添加塩基、溶媒、温度、活性化剤等の重合条件を詳細に探索する必要があった。種々の条件の検討の結果、最適条件においては、分子量分布が極めて狭く分子量及び構造が制御された、親水性、疎水性、刺激応答性ポリマーやそのジブロックコポリマーが合成できることがわかった。 刺激応答性ジブロックコポリマーとしては、親水性セグメントとなるポリ(ヒドロキシエチルVE)[Poly(HOVE)]と感熱応答性のポリ(エトキシエチルVE)[Poly(EOVE)]のジブロックコポリマーを検討した。その結果、最適な分子量、濃度の条件下では、低温において低粘度の溶液状態が、ある温度において瞬時にゲル化することがわかった。また、Poly(EOVE)の代わりに、異なる温度で親水性から疎水性へ変化する感熱応答性セグメントを用いると、設定された温度でゲル化する系も合成可能になった。物理ゲル化機構に関する研究も行い、Poly(EOVE)セグメントの熱応答性疎水化(脱水)によりミセルが生成し、さらにミセル間のパッキングによりゲル化することが、小角中性子散乱や動的光散乱などの結果、及びフリーズフラクチャーを用いたTEM観察の結果などから明らかになった。 さらに、上述の結果を応用することにより、その他の種々のセグメントを有するジブロックコポリマーを合成し、様々な刺激(例えば、降温やある温度範囲、有機化合物の添加、pHの変化など)に応答してゲル化する系を見出すことができた。
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