本研究は、平成13年度から15年度までの3ヶ年の予定である。前年度は、種々のジブロックコポリマーの合成と、物理ゲルのように自己組織化する刺激応答性高分子系の分子設計を検討した。今年度は、まず上記ジブロックコポリマーの分子設計に必要不可欠な、新規刺激応答性ポリマーの設計・合成に着手した。その結果、従来のような水中でLCST型の相分離をする刺激応答以外に、様々な有機溶媒系でUCST型相分離を極めて高感度に示すような系を見出すことができた。例えば、水中でLCST型相分離を示したポリ(エトキシエチルビニルエーテル)は、アルカン中でUCST型相分離を示した。特に興味深いことは、その高感度だけでなく、アルカンの長さによりその相分離温度が大きく変化することである。例えば、デカン中では50℃、オクタン中では35℃、ヘキサン中では20℃である。この結果は、工業的にも、高分子溶液の基礎研究的にも重要な結果である。一方、疎水性のポリ(イソブチルビニルエーテル)は、エタノール中で相分離した。その他、極微量の水(0.05%以下)を添加することにより相分離する系や、pH応答系なども新たに見出した。また、ランダムコポリマーを用いた新しい刺激応答性ポリマーの合成も来年へ向けて検討を始めている。 これらの刺激応答性セグメントと親水性または疎水性セグメントとのジブロックコポリマーによる、種々の物理ゲル化挙動に関して検討した。前年度見出した、数十ナノメートルに大きさの揃ったミセルの生成およびそれらの超格子型配列が、他の刺激応答系でも見られることがわかった。例えば、ポリ(フェノキシエチルビニルエーテル)とポリ(メトキシエチルビニルエーテル)のジブロックコポリマーのアセトン溶液に、選択溶媒の水を添加するだけで、上述のような変化が高感度に起こることが、SANS等によって確認された。
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