本研究の目的はDNAを溶融塩化し、全く新しい機能材料として評価し、イオニクス分野への展開の基礎とすることである。平成13年度はDNAのモデルとして核酸塩基を用い、溶融塩化の方法論を開拓した。まず、ハロゲン化アルキルを用いて核酸塩基の4級化を試みたが、3級アミンにはなるものの、4級化まで進めるのは困難であった。そこで、従来から我々が溶融塩化に利用している中和法を用いた。その結果、中和に用いる酸の種類に依存するが、強酸を用いてアデニンとシトシンを溶融塩化することに成功した。この知見をもとに、DNAそのものを溶融塩化することを試みた。DNAを強酸水溶液で中和して得られた固体のイオン伝導度を測定したが、導電性は低かった。これは溶融塩化される核酸塩基の重量分率が最大でも20%にしかならないため、連続した溶融塩ドメインが形成されていないことによると考察された。そこで、この系にさらに溶融塩を添加した。シトシンをイミド酸で中和させた塩は溶融塩となったので、これを中和したDNAに加え、フィルム化したが、力学物性とイオン伝導度の両方を満足させることはできなかった。それに対して、良好な溶融塩であるエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを20wt%以上加えると、1x10^<-4>S/cmを越える高いイオン伝導度を有するフレキシブルな溶融塩化DNAフィルムが得られた。
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