研究概要 |
本研究では、現在の乾式精錬法では処理が困難な含砒素銅鉱物に対しバイオリーチング法を適用し、銅を回収する省エネルギー・環環調和型のプロセスの基礎を確立することを目的としている。本年度においては、鉱物に対する銀イオンの作用を検討し、さらに銀イオン存在下においてバイオリーチングを実施するために、銀耐性鉄酸化細菌の選抜を行った。また、浸出条件の最適化のために、銀イオン存在下におけるバイオリーチングを実施した。 その結果、硝酸銀溶液において処理された含砒素銅鉱物は、通常よりも第二鉄イオンによる酸化が進み、銅の浸出が向上することが確認された。その際に、銀イオンは鉱物の一部と置換され、鉱物表面に存在することが、EDXによる解析の結果判明した。そのとき、銀の周辺には銅が集まっていることが確認され、銀イオンによる含砒素銅鉱物は銀の直接的作用により溶解が促進されることが推定された。一方、硝酸銀溶液で処理した黄鉄鉱は、溶解が抑制されることが確認され、銀イオンにより選択的浸出の可能性が高いことを示された。 一方、11種類の鉄酸化細菌単離株(Acidithiobacillus ferrooxidans E-24, E-7, E-15, E-53, Y5-9, 2-1, 16-6, B-12, Eel, T23-3, ATCC23270)を用いて銀耐性を調べたところ、E-24株のみが0.0001mol/Lの銀イオン存在下においても鉄酸化活性を示し、他の菌株よりも強い銀耐性を持つことが分かった。 さらに、鉄酸化細菌の集積培養菌を用いて、銀イオンで処理した含砒素銅精鉱のバイオリーチングを行ったところ、60%以上の銅が進出したにも関わらず、鉄の浸出は20%に抑制された。この時の精鉱表面をXRDにより調べたところ、含砒素鉱物のみが溶解し、黄鉄鉱が残っていることが示された。すなわち、含砒素銅鉱物の選択的浸出が行われたことになる。
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