本年は、主として、脱渋したカキ果実の機能特性のひとつであるお酒の酔い覚まし、悪酔い防止に関するデーターを揃えることを中心とした試験設計を行なった。つまり、第一に、脱渋した渋ガキ果実と甘ガキ果実を食べた時に、胃の中でどの程度消化されて可溶性タンニンが溶出してくるかを確認した。胃酸を想定したpH2の酸性溶液中37℃1時間インキュベートした結果、脱渋した渋ガキでは、インキュベート前の2倍の可溶性タンニンが溶出したが、甘ガキではインキュベート前と変わらなかった。これは、渋ガキを脱渋してタンニンを不溶化することで甘くしたものは、胃の中で再度可溶化することを意味しており、血中へのタンニンの移行も甘ガキより多く、悪酔い防止効果は脱渋果で高いことが示唆された。 第二に、実際にマウスを用いて脱渋したカキの果汁0.2mlを経口投与し、30分後アルコールを皮下注射(14μl/体重1g;体重60kgのヒトが清酒5合を飲んだことに相当する)して、マウスの酔いの状態を行動観察するとともに、その1時間後採血し、血中アルコール濃度およびアセトアルデヒド濃度をヘッドスペース法でガスクロマトグラフを用いて測定した。その結果、カキ果汁を投与した区ではアルコール(エチルアルコール)、アセトアルデヒドともに、投与しなかった対照区に比べて濃度が低く抑えられた。とくに、アセトアルデヒドは対照区の1/2に抑えられ、悪酔い防止に効果がある可能性が示唆された。
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