1.ヤガ類による果実への被害回避に及ぼす本忌避剤の影響について、倉敷市内の民間の果樹園2カ所、岡山県農試、愛媛県果樹試、福島県果樹試で試験を行った。その結果、設置個所で本忌避剤の効果が異なった。福島果試の川中島白桃園では、本剤を設置することで100%ヤガの被害をおさえることができた。しかし、愛媛県果樹試のナシでは途中から急速に効果の低減がみられた。この原因の1つとして、デバイスからの安定的な忌避剤放出に問題があると思われる。 2.忌避剤の性質:当初予定した吸着剤の探索よりも前に本忌避剤の性質について明らかにした。その結果、本忌避剤は紫外線照射によりトランス型からシス型に異性化し、1:1の割合で安定することが明らかになった。さらに、夏期の高温でも異性化あるいは分解されないことも明らかとなった。 3.忌避剤の放出量の推定:本年は先ず紫外線を完全に遮断するために写真フィルムを収納するパトローネの中に忌避剤を入れ、果樹園に設置し、一週間ごとにデバイスを回収し、残存した忌避剤をGCMSで測定した。その結果、放出量は当初予定していたよりもはるかに少なく、約1mg/日であった。しかも、安定的な放出期間は10日程度とみられた。今後のデバイスの改良を目指す。一方で、非常に少量でも忌避効果が高いことが明らかとなった。 4.設置方法の検討:忌避剤の設置場所を検討した結果、果実よりも上に設置した方が効果が高いことが明らかとなった。また、一カ所にまとめて忌避剤を設置するよりもばらばらに設置した方が被害軽減の効果が大きかった。 5.ヤガの夜間行動の観察:果樹園内に忌避剤処理区と対照区を設け、赤外線カメラで日没から夜明けまでヤガの行動を観察した。果樹園全体へのヤガの飛来数が少なく、不明な点も多いが、忌避剤設置区への飛来が少ないようにみえた。今後、観察例を増やし解析する。 6.他害虫への影響:ヤガ類と同じ科に属するハスモンヨトウ幼虫の行動に本忌避剤は明確な影響を及ぼさなかった。今後成虫への影響を調べる。
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