1.吸蛾類によるモモやナシといった果実への被害回避に及ぼす忌避剤の効果について、倉敷市内の一般農家の圃場2箇所、福島県果樹試験場、愛媛県果樹試験場、和歌山県果樹試験場で試験した。その結果、設置場所の違いにより忌避効果が異なったが、忌避剤の放出量が充分な場合は50〜100%被害を軽減することができた。 2.用いた忌避剤は紫外線でトランス型からシス型に異性化し、忌避効果が低下すると考えられている。そこで、これらの異性体による触角での認識の違い、種による違いを触角電図で調べた。その結果、果実吸蛾類の一種であるヒメエグリバでは、触角のレベルでトランス体、シス体ともに反応がみられた。一方、野菜の害虫であるオオタバコガでは、触角のレベルで両者とも明瞭な反応は観察されなかった。 3.ヒメエグリバ成虫の飛翔行動に及ぼす忌避剤の影響を調べた。その結果、忌避剤がない場合は、夜10時前後と明け方の4時前後に飛翔のピークが観察された。しかし、忌避剤を処理した場合はその様なピークはみられず、夜中連続的な飛翔がみられた。一方、触角レベルで反応が見られなかったオオタバコガでは、飛翔行動は忌避剤の影響を受けなかった。 4.フィルム薄膜を通して忌避剤を1ケ月程度安定的に放出できるデバイスが開発できた。今後、実用化に際して設置労力を軽減するため、より簡便な忌避剤の開発を目指す。 5.本忌避剤の他種への忌避効果を明らかにするため、ハスモンヨトウ、ナシヒメシンクイ、モモシンクイの性フェロモン剤と本忌避剤とを併用して誘引効果への影響を調べた。その結果、いずれも性フェロモン剤の誘引効果が強く、忌避効果は見られなかった。
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