研究概要 |
バキュロウイルス感染細胞から翻訳後修飾が可能な無細胞蛋白質生産系を構築するための基礎的技術開発を目的として、N型糖鎖付加修飾反応に焦点を絞り、まず使用する昆虫細胞の選定を行った。組換え糖蛋白質(PTTH)を数種バキュロウイルスベクター系で発現させ、付加される糖鎖の主要な構造をレクチンブロットなどで比較検討したところ、High Five細胞では、アレルゲンとなるコアα1,3フコースの分岐が比較的多いことと、サクサン細胞ではわずかに複合型糖鎖の付加がおこるなど若干の細胞間差異があるものの、いずれの鱗翅目昆虫細胞でも末端マンノースとコアα1,6フコースの分岐を有する構造が主体であった。そこで、ウイルスと細胞の両方のゲノム情報が最も豊富なカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)とBmN4細胞を実験材料に供試して研究をすすめることにした。 BmNPVにおけるvery lateプロモーターからの糖蛋白質生産パターンの解析を容易にするために、バキュロウイルスにおける生産効率の高いラブドウイルスIHNVの表面膜糖蛋白質遺伝子を改変し、膜結合領域以降をコードする配列をヘキサヒスチジンタグ配列に置換したcDNAを作製し、BmNPV感染BmN4細胞で発現させたところ、感染多重度20pfu/cellで感染後36時間目には糖鎖が付加された産物がイムノブロットにより明瞭に確認された。ただし、産物は分泌されず、細胞内で不溶化し蓄積することが判明した。 以上の成果に基づき、次年度は、感染後36時間前後の細胞を分画抽出し、無細胞蛋白質翻訳修飾系の構築を試みると同時に、組換え糖蛋白質不溶化のメカニズムの解明と細胞外での不溶化阻止技術の開発にも取り組む。
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