フラボノイド化合物は花の色に代表され、植物で生産される二次代謝産物である。フラボノイド生合成の鍵中間体としてのカルコンを放線菌で発酵生産させるために、植物由来の遺伝子を放線菌用に改変して人工生合成遺伝子クラスターを造成した。カルコンはフェニルアラニンからは4段階の反応、チロシンからは3段階の反応で合成される。植物由来の4つの酵素遺伝子を強カプロモーターの下流にタンデムに連結して、高コピー数ベクターに載せて放線菌Streptomyces lividansに導入した。フェニルアラニンからシンナミン酸またチロシンからp-クマリン酸への反応は効率よく進み、生成物をHPLCで同定できたが、クマロイル-CoAリガーゼ、カルコン合成酵素を含むそれ以降の反応が効率が低く、生成物の同定には至っていない。改善策としては、一次代謝産物のフェニルアラニンまたはチロシンの生産量を増大させた宿主を用いることや次に述べる放線菌由来のクマロイル-CoAリガーゼ遺伝子の利用が考えられる。 ゲノム解析が完了したS.coelicolorA3(2)には、植物のクマロイル-CoAリガーゼと極めて相同性の高い蛋白をコードする遺伝子が存在する。本遺伝子を大腸菌の発現系を用いて発現させ、蛋白を大量精製した。本酵素はクマロイルのみでなく、スチルベンを基質としてCoAを付加させた。植物の大部分の本リガーゼはスチルベンにはほとんど汚性を示さない。今後はこの遺伝子を人工生合成遺伝子クラスターに組込むことにより、有用物質の放線菌での発酵生産を目指す。
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