研究概要 |
嫌気条件下での生物機能の探索と応用を目的とし、本年度は乳酸菌が嫌気条件下で示す特異な脂肪酸代謝(不飽和脂肪酸への水素添加による飽和脂肪酸の生成)に着目した研究を展開した。特に、水素添加反応の中間体であり新規機能性脂質として注目を集めている共役リノール酸(CLA)の生産を指向した応用研究を行い、以下の成果を得た。 酸素吸着剤を用いた嫌気(微好気)条件下にて、種々の乳酸菌の洗浄菌体をリノール酸とともにインキュベートし、新たに生成する脂肪酸を分離・同定した。その結果、乳酸菌がリノール酸をCLAへと変換することを認めた。この活性は、Lactobacilus属の乳酸菌に広く分布しており、培地にリノール酸を加えることや、反応を嫌気(微好気)的に行うことにより顕在化した。各種機器分析により、生成するCLAはcis-9,trans-11-octadecadienoic acid(18:2)およびtrans-9,trans-11-18:2であることが判明した。高いCLA生産能を示したLactobacillus plantarum AKU1009aの湿菌体を用い、リノール酸からのCLA生産の効率化を図った結果、CLAの生産量は約40mg/mlに達した。また、生産されるCLAのほとんどが遊離型として菌体内に(あるいは菌体に付着して)回収された。この変換反応は、リノール酸の水和によるヒドロキシ脂肪酸(10-hydroxy-12-octadecaenoic acid)の生成と、ヒドロキシ脂肪酸の脱水にともなう二重結合の転移反応の二段階からなると予想された。また、生成したCLAはさらに水素添加を受け、trans-10-octadecaenoic acidへと変換されると考えられた。
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