食餌中必須アミノ酸欠乏による摂食低下の機構について、迷走神経を介した経路を解析した、腹腔内迷走神経の肝臓枝、または腹腔枝を切断したラットにおいて、メチオニン欠乏食に対する摂食低下が小さくなった。特に摂食開始初期のメチオニン欠乏食摂食抑制に関しては、迷走神経を介した感知機構が重要であることが明らかとなった。また、摂食促進因子グレリンを脳室内投与した場合、メチオニン欠乏食ではグレリンの効果が打ち消され、アミノ酸バランスはグレリンに対する応答に必須であることがわかった。一方、メチオニン過剰による摂食抑制についても同様の解析を行ったところ、過剰の場合はそれを感知して摂食抑制が起こるまでに時間がかかること、しかし数日間同様の食餌を与えると早くから感知するようになること、さらにその場合の応答には迷走神経胃枝が関与していること、などがわかった。さらに、必須アミノ酸欠乏時に視床下部で発現の変化する遺伝子をDNAマイクロアレイ法により検索したところ、レプチンのシグナルを伝えるSTAT3の発現がミメチオニンやリジンの欠乏で上昇することが明らかとなり、アミノ酸による摂食制御の一部を担っていることが示唆された。 摂食抑制因子レプチンには、いくつかの不飽和脂肪酸が結合することが明らかとなっている。これまでにわかっているもの以外に、DHAが強く結合することや、レチノールが弱く結合することも判明した。脂肪酸が結合したレプチンでは摂食抑制効果が著しく低下していた。これは脳室投与、尾静脈投与の何れにおいても観察された。
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